面接での魅力づけには「この人に入社してほしい」という採用側の思惑が入り込みます。すると、求職者が求めていそうなことを話してしまい、会社の本来の姿とずれたり、魅力を過度に表現したりしやすくなります。魅力採用は、社長・幹部・先輩社員の考え方を日常的に発信して公開しておく方法です。多人数が継続して発信する内容には嘘を織り込みにくい、という点が違いです。
面接での「魅力づけ」には、どんな問題があるのか?
問題は話す人の立場に、あらかじめ利害が乗っていることです。
ここで言う魅力づけ(一般的な採用用語としては「魅力付け」)とは、面接や選考の場で候補者の入社意向を高める働きかけのことです。面接の後半で「うちはこういう会社です」「こういう成長ができます」と口頭で語る、あの時間がその代表例です。
この時点で、求職者はすでに面接に来ています。採用側には「この人に入社してほしい」という思惑がどうしても発生する、と代表・原本は考えています。その思惑は、話す内容ににじみ出ます。結果として起きやすいのが次の2つです。
- 相手に合わせた話をしてしまう — 目の前の求職者が求めていそうなことを、魅力として話してしまう。相手が変われば、語られる魅力も変わります。
- 実態より大きく語ってしまう — 本来持っている魅力を、過度に表現してしまう。会社の本来の姿と異なる内容が伝わります。
どちらも、悪意があって起きることではありません。採ろうとする側が語る、という構造そのものから出てくる歪みです。そして、そうした話が重なるほど、求職者の側も慎重になっていきます。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「求職者に入社してほしいという人事の思惑というのがどうしても発生してしまうと思います。そうしますと、求職者が求めている、その面接に来ている人たちが求めているようなことを魅力づけとして話してしまう」
「会社の本来の姿と異なる内容を伝えてしまったりとか、本来持っている魅力をさらに過度に表現したりして話してしまうような、そういう問題が起きるのではないかなというふうに思います」
語る側の思惑は、日常的な発信ではどう変わるのか?
変わるのは「誰に向かって書いているか」です。面接での魅力づけは、目の前にいる特定の1人に向けて話します。日常的な発信は、まだ会っていない不特定多数に向けて、誰が読むかわからない状態で書きます。この違いが、語る内容の性質を変えると考えています。
| 比較軸 | 面接での魅力づけ | 日常的な発信(魅力採用) |
|---|---|---|
| 語る側の立場 | 目の前の相手に入社してほしいと思っている | 誰が読むかわからない状態で書く |
| 内容が変わるか | 相手に合わせて変わりうる | 読み手を特定しないため変えられない |
| 語り手の人数 | 基本は1人(その場の面接担当者) | 社長・幹部社員・先輩社員の複数 |
| 言葉の残り方 | その場で消える | 記録として残り、後から照合できる |
| 読まれる時期 | 面接時のみ | 応募前・選考中・入社後 |
この表のうち「言葉の残り方」が、実務上いちばん効くと考えています。面接で語った言葉は残りませんが、公開した発信は残ります。残るということは、入社後に読み返されるということでもあります。言った内容と実態がずれていれば、入社後に露見しやすくなります。逆に言えば、後から照合される前提で書かれた文章は、最初から盛りにくくなる——という設計です。
なお、魅力づけと魅力採用を「タイミング・対象・手段・担い手・効果の持続」といった一般的な軸で比較した整理は魅力採用とはにあります。この記事では、そこでは扱っていない「語る側に乗る思惑」という一点に絞って掘り下げています。
なぜ、毎日更新される発信には嘘を織り込みにくいのか?
代表・原本が挙げている理由は量と人数と時間の3つです。ひとつの嘘をつき通すには、その後のすべての発信をその嘘に整合させ続けることになるためです。
- 量 — 1回の面接なら話を作れても、更新され続ける記事すべてで一貫させるのは現実的ではありません。
- 人数 — 社長・幹部・先輩社員と語り手が複数いれば、実態と異なる話は互いに食い違います。ひとりの言葉なら整えられますが、複数人の言葉は揃いません。
- 時間 — 継続的に発信していれば、時期をまたいだ矛盾も表に出ます。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「毎日のように更新しているその考え方、理念とかビジョンとかね、いろんな考え方をいろんな人が更新していったとしたら、そこに嘘を織り込むのはなかなか難しいんじゃないかなというふうに思います」
つまり魅力採用は、「正直に書きましょう」という心がけではなく、正直にしか書けなくなる状態を作る方法だと考えています。誠実さを人の意志に頼らず、発信の量と人数と継続性という構造で担保する。ここが面接での魅力づけとの決定的な差です。
面接での魅力づけは、やめたほうがいいのか?
やめる必要はない、というのが当社の考えです。面接は、その人固有の疑問に答えられる場です。問題なのは魅力づけそのものではなく、魅力を伝える機会が面接しかない状態のほうだと考えています。
魅力の説明を面接に集中させると、次のことが起こりやすくなります。
- 応募前の段階では、その会社を選ぶ理由が求職者に届かない
- 面接の限られた時間に、説明と見極めの両方を詰め込むことになる
- 「入社してほしい」という思惑が乗った状態でしか、魅力が語られない
先に発信を公開しておけば、面接はすでに読んで納得した人と、細部をすり合わせる場に変わります。会社の考え方を説明する時間を、相互理解の時間に振り替えられる、という設計です。
発信した内容は、入社後に何の役に立つのか?
採用のために作った発信は、そのまま入社後の理念浸透と社内コミュニケーションの材料になります。ここが、魅力採用を「採用広告」ではなく社内向けの資産としても位置づけている理由です。
具体的には、次の2つの用途があります。
- 理念の浸透 — 理念やビジョンが繰り返し語られた記録が残っているため、入社後に何度でも読み返せます。入社前に読んでいたものと同じ内容を、入社後も読み続けられる状態です。
- 上司・先輩の思考の理解 — 上司や先輩社員がどんなことを考えて仕事をしているのかを、本人に直接聞かなくても読んで理解できます。
「うちの上司が何を考えているかわからない」という状態は、離職につながりやすい要因のひとつだと考えています。日々の会話の量が足りていなくても、思考が文章として可視化されていれば、相互理解はある程度保てるのではないか——という見立てです。この点は理念浸透と定着率の関係で詳しく書いています。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「採用後、入社後に関してもその内容を見ることで理念の浸透であったりとか、上司や先輩社員のどんなことを考えて仕事をしているのかを理解する、そういうツールにもなりますので、コミュニケーションの補佐するようなものにもなるのではないかなというふうに考えています」
なお、ミリョクル自体の採用成果(応募数の増減や定着率の変化)については、当社はまだ実測データを持っていません。ここは断定せず、「入社前後で同じコンテンツを読める状態にすると、ギャップが小さくなるはずだ」という設計・仮説として提示しています。
面接以外で魅力を伝えるには、何から始めればいいのか?
いきなり毎日更新を目指す必要はありません。以下は当社が推奨している順序であり、効果を保証するものではありません。
- 語り手を社長ひとりにしない — 幹部社員・先輩社員にも語ってもらう前提を置きます。語り手が複数いることが、内容の信頼性の土台になると考えています。
- 面接で毎回説明していることを書き出す — 口頭で繰り返している内容は、すでに完成した原稿に近いものです。これを公開の場に移します。
- 相手を想定せずに書く — 特定の応募者に向けて書かないことが、思惑の混入を防ぐという考え方です。誰が読むかわからない状態で書くこと自体を品質管理として位置づけています。
- 合わない人の条件も書く — 魅力だけを並べたページより、向いていない人の条件も書かれているページのほうが、魅力の側の記述も受け止めてもらいやすいのではないかと考えています。
- 続く形にする — 一度作って終わりでは、面接での魅力づけと同じ「一点の情報」になります。更新され続けること自体を、情報の信頼性の根拠にする設計です。
何を書けばいいか材料が思い浮かばない場合は採用サイトに何を書けばいいかを、書く時間が取れない構造については経営者の発信が続かない理由をご覧ください。
「発信を続ける」ことは、実際に成果につながるのか?
魅力採用(ミリョクル)の採用領域での実測データを、当社はまだ持っていません。応募数や定着率がどう変わるかを示せる段階ではない、ということです。一方で、その土台になっている「話した内容を検索可能な記事として蓄積し続ける」という仕組み自体には、マーケティング用途での実測があります。
| サイト | 対象キーワード | 順位 | 運用期間 |
|---|---|---|---|
| kigyousien.com(自社) | 起業支援 伴走サポート | 1位 | 1ヶ月 |
| kigyousien.com(自社) | 起業支援 伴走 | 1〜3位 | 1ヶ月 |
| souryokomon.com(クライアント) | 僧侶顧問 | 1位 | 1ヶ月 |
| souryokomon.com(クライアント) | 仏教 組織開発 | 1〜3位 | 1ヶ月 |
いずれも2026年8月時点の順位で、対象はロングテールのキーワードです。ビッグワードを狙わず、確実に取れる言葉から積む設計にしているため、1ヶ月で結果が出ています。検索順位は変動しますし、これは採用領域の実績ではなくマーケティング用途のSEO実績である点もあわせてお伝えしておきます。
出典:ノルツ株式会社 自社運用データ(kigyousien.com/souryokomon.com、2026年8月時点。souryokomon.com はクライアント掲載許可済み)