募集要項の外側にあるもの

採用サイトに何を書けばいいか

「何を書けばいいかわからない」の正体は、ネタ不足ではありません。求職者が何を知りたいかが定義されていないだけです。

最終更新日:2026年8月8日
要点

採用サイトに書くべきなのは、募集要項ではなく「判断材料」です。求職者は求人媒体で興味を持った後、会社名で検索して判断材料を探します。そこに募集要項しかなければ、判断できず離脱します。必要なのは、経営者と社員が何を考え、何を大切にしているかが具体的にわかる情報です。

採用サイトには何を書けばいいのか?

一言でいえば、「この会社を選ぶかどうかを判断できる材料」です。募集要項ではありません。

募集要項は「条件を伝えるもの」です。給与、勤務地、休日、必要なスキル。これらは応募の前提条件ではありますが、判断材料にはなりません。なぜなら、条件だけで比較されたら、条件が良い会社が選ばれるからです。

求職者が本当に知りたいのは、条件表には書かれていないことです。ここで働くとどうなるのか。誰と働くのか。この会社は何を考えているのか。この3つに答えていない採用サイトは、どれだけデザインが良くても機能しません。

採用サイトの内容を検討している中小企業の担当者

なぜ募集要項だけでは足りないのか?

求職者の行動を追うと理由がわかります。実際の流れはこうです。

  1. 求人媒体(マイナビ・リクルート等)で求人を見る
  2. 会社名や求人票のメッセージを見て「ちょっと気になる」と思う
  3. 会社名で検索する(ほぼ必ずこの行動が入ります)
  4. 出てきた情報を見て、応募するかどうかを判断する

問題は3から4の間です。検索した先に募集要項しかなければ、判断する材料がないまま離脱します。「気になる」で止まったまま、条件の良い他社に流れていきます。

この離脱は、求人媒体の掲載枠を大きくしても防げません。入口を広げても、その先に何もなければ通り抜けていくだけです。むしろ広告費をかけて集めた人を、情報不足で逃していることになります。

「求人媒体にお金を払っているのに応募が来ない、というご相談をよくいただきます。多くの場合、媒体の問題ではありません。媒体で興味を持った人が会社名で調べたときに、何も出てこない。そこで止まっています。広告費を増やす前に、調べた先を用意するほうが先です。」

ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟

載せるべきコンテンツは具体的に何か?

判断材料になるコンテンツを、優先度順に整理します。

優先度コンテンツ答えている問い書き方のポイント
最優先経営者の判断の理由この会社は何を考えているのか抽象論ではなく、実際の判断事例で書く
最優先うまくいかなかった話都合の良いことだけ言っていないか失敗と、そこから変えたことをセットで
最優先合わない人の説明自分は合うのか「こういう人には向いていません」と明記
幹部社員の考え方誰と働くのか社長以外の視点を複数出す
仕事の実態(面倒な部分含む)実際に何をするのか1日の流れより、地味な部分の説明を厚く
顧客・案件の具体例誰の何を解決しているのか守秘に配慮しつつ、具体的な仕事の中身を
入社後に身につくこと成長できるのか研修制度の一覧ではなく、実際の変化を
会社の方向性この会社はどこへ行くのか数値目標より、なぜそこを目指すのか
前提募集要項条件は何か正確に。ただしこれ単体では判断材料にならない

上位3つに共通するのは、「都合の悪いことを含む」という点です。これは直感に反するかもしれませんが、良いことだけが並んだ文章は広告として読まれ、都合の悪いことも書いてある文章は情報として読まれます。信用の差はここで生まれます。

載せても効果が薄いコンテンツは何か?

よく載っているが、判断材料として機能しにくいものを挙げます。載せてはいけないという意味ではなく、これだけでは足りないという意味です。

  • 「アットホームな職場です」等の抽象語 — ほぼ全社が書いており、差別化情報にならない。外から検証もできない
  • 良い話だけの社員インタビュー — 「毎日楽しいです」だけでは広告として読まれる。困難や葛藤が含まれて初めて信用される
  • オフィス風景やイベントの写真 — 雰囲気は伝わるが、判断の材料にはならない。あくまで補助
  • 沿革・受賞歴の羅列 — 会社の歴史は求職者の判断軸ではない。「なぜその選択をしたか」が抜けていると読まれない
  • 数値目標・ビジョンの掲示だけ — 「売上◯億円を目指します」は、求職者にとって自分事にならない
  • 福利厚生の一覧 — 条件比較の土俵に戻ってしまう。原資の大きい会社に必ず負ける

これらの共通点は、「会社が言いたいこと」であって「求職者が知りたいこと」ではないという点です。採用サイトは会社案内ではありません。読み手が判断するための資料です。

誰の言葉で書くべきなのか?

経営者と幹部社員です。人事担当者や広報担当者ではありません。

理由は単純で、判断の根拠を持っているのが経営者と幹部だからです。人事担当者が書くと、どうしても「会社としての公式見解」になります。角が取れ、当たり障りがなくなり、他社と区別がつかなくなります。「アットホームな職場」がどの会社の採用サイトにも並ぶのは、この構造が原因です。

経営者が自分の言葉で語っている場面

複数の幹部が発信すると、さらに効果が上がります。社長の視点、現場を預かる幹部の視点、それぞれ違う話が出てきます。求職者は入社後に自分が接する人の考え方を、事前に知ることができます。これは大手には作りにくい状態です。組織が大きいほど、個人の顔は見えなくなります。

ネタが尽きたらどうすればいいのか?

「3本書いたらネタが尽きた」というのは、非常によくある状態です。しかし実際にはネタが尽きたのではなく、ネタの掘り方を知らないだけです。次の切り口を試してください。

  1. 断った案件から掘る — この1年で断った仕事を思い出します。なぜ断ったのか。その理由が価値観です
  2. 失敗から掘る — うまくいかなかった案件、間違った判断。そこから何を変えたのか
  3. 採用の失敗から掘る — 合わなかった人はどこが合わなかったのか。これは「どんな人と働きたいか」の裏返しです
  4. 業界の常識から掘る — 業界では当たり前とされているが、自社は違うと考えていること
  5. 質問から掘る — 顧客や社員からよく聞かれる質問。よく聞かれるということは、それが知りたいことです
  6. 過去の自分から掘る — 創業時の自分に何をアドバイスするか。これは若手への言葉にもなります
  7. 他社の記事に反応する — 業界メディアの記事を読んで、賛成できる点・できない点を書く

この7つの切り口を1周するだけで、記事は数十本分の材料になります。ネタは会社の中に大量にあります。取り出す方法が決まっていないだけです。

書く時間がない場合はどうするのか?

最大の壁がここです。書くべき内容がわかり、ネタの掘り方もわかった。それでも書けない。理由は明確で、書けるのが経営者だけであり、その経営者に時間がないからです。

「書く」という作業は、まとまった時間を要求します。1本3,000字の記事を書こうとすれば、構成を考えて、書いて、読み返して、直す。慣れていれば2時間、慣れていなければ半日かかります。これを毎月継続できる経営者は、そう多くありません。

対策は、書く工程を経営者から外すことです。話すことは日常業務の延長でできます。会議で話すのと同じことを、記録される形で話すだけです。そこから記事にする工程を、別の誰か(または仕組み)が担えば、発信は続きます。

なぜ発信が続かないのかという構造については、経営者の発信が続かない理由で詳しく解説しています。

魅力採用「ミリョクル」について

ミリョクルは、月1回・60分の収録だけで会社の考え方を記事にし、自社サイトに蓄積するサービスです。書く作業は発生しません。ネタ出しもこちらから質問する形で進めます。初期費用100,000円、月額100,000円(税別)。記事本数は収録内容により変動し、本数の保証はありません。詳しくはサービス内容をご覧ください。

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原本

原本 昌悟(はらもと しょうご) ノルツ株式会社 代表取締役。2019年6月に同社を設立。デザイン経営による経営者伴走支援、起業支援、Web制作・SEOを手がける。HR・人材事業者コミュニティ「HR TOKYO」運営。

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