採用サイトに書くべきなのは、募集要項ではなく「判断材料」です。求職者は求人媒体で興味を持った後、会社名で検索して判断材料を探します。そこに募集要項しかなければ、判断できず離脱します。必要なのは、経営者と社員が何を考え、何を大切にしているかが具体的にわかる情報です。
採用サイトには何を書けばいいのか?
一言でいえば、「この会社を選ぶかどうかを判断できる材料」です。募集要項ではありません。
募集要項は「条件を伝えるもの」です。給与、勤務地、休日、必要なスキル。これらは応募の前提条件ではありますが、判断材料にはなりません。なぜなら、条件だけで比較されたら、条件が良い会社が選ばれるからです。
求職者が本当に知りたいのは、条件表には書かれていないことです。ここで働くとどうなるのか。誰と働くのか。この会社は何を考えているのか。この3つに答えていない採用サイトは、どれだけデザインが良くても機能しません。
なぜ募集要項だけでは足りないのか?
求職者の行動を追うと理由がわかります。実際の流れはこうです。
- 求人媒体(マイナビ・リクルート等)で求人を見る
- 会社名や求人票のメッセージを見て「ちょっと気になる」と思う
- 会社名で検索する(ほぼ必ずこの行動が入ります)
- 出てきた情報を見て、応募するかどうかを判断する
問題は3から4の間です。検索した先に募集要項しかなければ、判断する材料がないまま離脱します。「気になる」で止まったまま、条件の良い他社に流れていきます。
この離脱は、求人媒体の掲載枠を大きくしても防げません。入口を広げても、その先に何もなければ通り抜けていくだけです。むしろ広告費をかけて集めた人を、情報不足で逃していることになります。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「求人媒体にお金を払っているのに応募が来ない、というご相談をよくいただきます。多くの場合、媒体の問題ではありません。媒体で興味を持った人が会社名で調べたときに、何も出てこない。そこで止まっています。広告費を増やす前に、調べた先を用意するほうが先です。」
載せるべきコンテンツは具体的に何か?
判断材料になるコンテンツを、優先度順に整理します。
| 優先度 | コンテンツ | 答えている問い | 書き方のポイント |
|---|---|---|---|
| 最優先 | 経営者の判断の理由 | この会社は何を考えているのか | 抽象論ではなく、実際の判断事例で書く |
| 最優先 | うまくいかなかった話 | 都合の良いことだけ言っていないか | 失敗と、そこから変えたことをセットで |
| 最優先 | 合わない人の説明 | 自分は合うのか | 「こういう人には向いていません」と明記 |
| 高 | 幹部社員の考え方 | 誰と働くのか | 社長以外の視点を複数出す |
| 高 | 仕事の実態(面倒な部分含む) | 実際に何をするのか | 1日の流れより、地味な部分の説明を厚く |
| 中 | 顧客・案件の具体例 | 誰の何を解決しているのか | 守秘に配慮しつつ、具体的な仕事の中身を |
| 中 | 入社後に身につくこと | 成長できるのか | 研修制度の一覧ではなく、実際の変化を |
| 中 | 会社の方向性 | この会社はどこへ行くのか | 数値目標より、なぜそこを目指すのか |
| 前提 | 募集要項 | 条件は何か | 正確に。ただしこれ単体では判断材料にならない |
上位3つに共通するのは、「都合の悪いことを含む」という点です。これは直感に反するかもしれませんが、良いことだけが並んだ文章は広告として読まれ、都合の悪いことも書いてある文章は情報として読まれます。信用の差はここで生まれます。
載せても効果が薄いコンテンツは何か?
よく載っているが、判断材料として機能しにくいものを挙げます。載せてはいけないという意味ではなく、これだけでは足りないという意味です。
- 「アットホームな職場です」等の抽象語 — ほぼ全社が書いており、差別化情報にならない。外から検証もできない
- 良い話だけの社員インタビュー — 「毎日楽しいです」だけでは広告として読まれる。困難や葛藤が含まれて初めて信用される
- オフィス風景やイベントの写真 — 雰囲気は伝わるが、判断の材料にはならない。あくまで補助
- 沿革・受賞歴の羅列 — 会社の歴史は求職者の判断軸ではない。「なぜその選択をしたか」が抜けていると読まれない
- 数値目標・ビジョンの掲示だけ — 「売上◯億円を目指します」は、求職者にとって自分事にならない
- 福利厚生の一覧 — 条件比較の土俵に戻ってしまう。原資の大きい会社に必ず負ける
これらの共通点は、「会社が言いたいこと」であって「求職者が知りたいこと」ではないという点です。採用サイトは会社案内ではありません。読み手が判断するための資料です。
誰の言葉で書くべきなのか?
経営者と幹部社員です。人事担当者や広報担当者ではありません。
理由は単純で、判断の根拠を持っているのが経営者と幹部だからです。人事担当者が書くと、どうしても「会社としての公式見解」になります。角が取れ、当たり障りがなくなり、他社と区別がつかなくなります。「アットホームな職場」がどの会社の採用サイトにも並ぶのは、この構造が原因です。
複数の幹部が発信すると、さらに効果が上がります。社長の視点、現場を預かる幹部の視点、それぞれ違う話が出てきます。求職者は入社後に自分が接する人の考え方を、事前に知ることができます。これは大手には作りにくい状態です。組織が大きいほど、個人の顔は見えなくなります。
ネタが尽きたらどうすればいいのか?
「3本書いたらネタが尽きた」というのは、非常によくある状態です。しかし実際にはネタが尽きたのではなく、ネタの掘り方を知らないだけです。次の切り口を試してください。
- 断った案件から掘る — この1年で断った仕事を思い出します。なぜ断ったのか。その理由が価値観です
- 失敗から掘る — うまくいかなかった案件、間違った判断。そこから何を変えたのか
- 採用の失敗から掘る — 合わなかった人はどこが合わなかったのか。これは「どんな人と働きたいか」の裏返しです
- 業界の常識から掘る — 業界では当たり前とされているが、自社は違うと考えていること
- 質問から掘る — 顧客や社員からよく聞かれる質問。よく聞かれるということは、それが知りたいことです
- 過去の自分から掘る — 創業時の自分に何をアドバイスするか。これは若手への言葉にもなります
- 他社の記事に反応する — 業界メディアの記事を読んで、賛成できる点・できない点を書く
この7つの切り口を1周するだけで、記事は数十本分の材料になります。ネタは会社の中に大量にあります。取り出す方法が決まっていないだけです。
書く時間がない場合はどうするのか?
最大の壁がここです。書くべき内容がわかり、ネタの掘り方もわかった。それでも書けない。理由は明確で、書けるのが経営者だけであり、その経営者に時間がないからです。
「書く」という作業は、まとまった時間を要求します。1本3,000字の記事を書こうとすれば、構成を考えて、書いて、読み返して、直す。慣れていれば2時間、慣れていなければ半日かかります。これを毎月継続できる経営者は、そう多くありません。
対策は、書く工程を経営者から外すことです。話すことは日常業務の延長でできます。会議で話すのと同じことを、記録される形で話すだけです。そこから記事にする工程を、別の誰か(または仕組み)が担えば、発信は続きます。
なぜ発信が続かないのかという構造については、経営者の発信が続かない理由で詳しく解説しています。
魅力採用「ミリョクル」について
ミリョクルは、月1回・60分の収録だけで会社の考え方を記事にし、自社サイトに蓄積するサービスです。書く作業は発生しません。ネタ出しもこちらから質問する形で進めます。初期費用100,000円、月額100,000円(税別)。記事本数は収録内容により変動し、本数の保証はありません。詳しくはサービス内容をご覧ください。
