採用のミスマッチが起きても、求職者には生活があるためすぐには辞められません。結果として、研修期間に給与を受け取りながら次の就職先を探す、という状態が生まれ得ます。このとき会社が負担した教育費用は、戻ってきません。防ぐ手段は入社後の対応ではなく、入社前にどれだけ会社の考え方を伝えておけるかだと考えています。魅力を伝えるは、この前倒しを仕組みにするための工程です。
採用のミスマッチとは、具体的に何が起きている状態か?
入社前に見た採用情報と、入社後の実態が違っている状態です。求職者は応募先を、入社前に見られる情報だけで決めます。当たり前の話ですが、ここが問題の起点になっています。
判断材料が求人票と数ページの採用情報しかなければ、入社後に「聞いていた話と違う」が起きる確率は上がります。嘘を書いたかどうかとは別の問題です。書かれていなかったことは、良い方向にも悪い方向にも想像で埋められます。その想像と実態がずれたとき、ミスマッチと呼ばれる状態になります。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「入社前と採用後、入社後で、その実際と全然違うねっていう、そのミスマッチが起きるっていうのが結構痛い問題だと思うんですね」
ミスマッチが起きたとき、なぜすぐに辞めないのか?
求職者にも生活があるからです。思っていたのと違う、だから明日から来ません、とはいきません。
ではどう動くか。原本が挙げているのは、在籍したまま次を探し始めるという動き方です。最初の研修などの期間に給与を受け取りながら、就職活動を再開する。会社側から見ると、仕事に身が入っていないなと感じていた矢先に「辞めます」と言われる、という形になります。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「最初の研修とかでお金をもらいながら次の就職先とか探しちゃうと思うんですよ。……そういうときって、結局その教育の費用がまるまるロスになってしまうんですよね」
この期間、会社側から見ると「新人を受け入れて育てている最中」です。実際に起きているのは別のことだった、と後から分かる。責める話ではありません。生活を守るための合理的な行動です。会社としても、この段階から引き止めに入るのは分が悪い。だから手を打つなら入社前だ、というのが当社の考え方です。
教育コストの「丸損」とは、何が失われているのか?
支払った給与だけでなく、教える側の時間と、採用にかけた費用がまとめて失われます。目に見える支出より、見えない支出のほうが大きくなりがちです。
| 失われるもの | 内容 | 気づきやすさ |
|---|---|---|
| 研修期間の人件費 | まだ成果が出る前の期間に支払った給与 | 帳簿に残るので気づく |
| 採用にかけた費用 | 媒体掲載費・面接に使った時間 | 帳簿に残るので気づく |
| 教える側の時間 | 先輩社員が自分の業務を止めて指導した分 | 見えにくい |
| 受け入れ準備 | 席・機材・アカウント・マニュアル整備 | 見えにくい |
| 再募集までの空白 | その人がいる前提で回していた業務の停滞 | 見えにくい |
人数の限られた会社では、教える側が現場の主戦力を兼ねていることが少なくありません。指導のために止めた業務は、あとから誰かが取り戻すしかありません。ここが、採用費用の数字だけを見ていると見落とされやすい部分だと考えています。
入社前の情報発信で、本当にミスマッチは減るのか?
減らせると考えています。ただし、当社に応募数や定着率の実測データはありません。そういう設計にしている、という段階の話として読んでください。
理屈としてはこうです。入社前に判断材料が少ないほど、想像で埋める範囲が広くなる。想像で埋めた部分は、実態とずれる可能性がある。だったら、埋めさせる範囲を先に狭めておけばいい。自社の魅力だけでなく、どういう考え方で動いているのかまで伝えたうえで採用に至れば、入社後のずれは小さくなります。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「先にその自社の魅力とか、どういう考え方で動いているのかっていう部分をしっかり伝えた上で、それで採用になるっていう形になれば、ミスマッチが減るっていうふうに思います」
この考え方は、応募を最大化する方向とは少し違います。会社の考え方を正直に出せば、合わないと感じた人は応募しません。入口の数が減る代わりに、入ってからのずれが減るという交換だと当社は捉えています。理念と定着の関係は理念浸透と定着率の関係で扱っています。
出典:ノルツ株式会社 代表取締役・原本昌悟へのインタビュー(2026年8月29日収録)。ミスマッチが実際にどれだけ減るかについて、当社に実測データはありません。本節は設計上の考え方です(2026年9月時点)。
入社前に伝えておくべきことは何か?
良いところだけでなく、判断の基準と、仕事の実際の進み方です。求人票に収まらなかった側の情報だと考えると分かりやすくなります。インタビューで語られているのは「自社の魅力と、どういう考え方で動いているのか」までですが、当社の支援ではこれを次の5項目に分けて聞き出しています。
- 何を大事にして判断しているか。売上とスピードのどちらを優先するのか、迷ったとき何を基準にするのか。
- 仕事の一日の実際の流れ。募集要項の業務内容ではなく、実際に何時にどう動いているか。
- できないこと・整っていないこと。制度がまだない、人が足りていない。先に言っておくとギャップになりません。
- 入社した人が最初につまずいた場所。すでにいる社員の実感は、求職者にとって一番参考になります。
- これから変えようとしていること。完成していない話も、その会社の現在地として伝わります。
3番目の「できないこと・整っていないこと」を出すのは勇気がいります。ただ、隠して入ってもらった場合、それが分かるのは入社後です。そのとき失われるのは、研修期間の人件費・採用費・教える側の時間といった、取り戻せない費用のほうです。誰の言葉で書くかについては先輩社員の声を拾うとEVP設計に近づくにまとめました。
面接で丁寧に説明すれば足りるのではないか?
面接は時間が限られていて、しかも双方が評価される場です。そこだけで会社の考え方を渡しきるのは難しいと考えています。
面接の場で会社側が自社を良く見せようとすると、求職者もそれを前提に聞きます。話す時間も限られます。一方、記事として先に公開してあれば、求職者は自分のペースで、応募する前に読めます。読んだうえで応募してきた人とは、面接の内容そのものが変わります。
面接での魅力づけに寄りかかった場合に何が起きるかは、「面接での魅力づけ」だけでは伝わらない理由で詳しく扱っています。
何から始めればよいか?
直近で辞めた人が、どこでずれたのかを1つ書き出すところからです。
- 最近の早期離職を1件思い出す。入社前の認識と実態が、どこでずれたかを言葉にします。
- そのずれが、いまの採用情報で防げるかを確認する。書いていなければ、次の人にも同じことが起きます。
- すでにいる社員に、入社前の印象との違いを聞く。良い方向の違いも記事の素材になります。
- 出てきた内容を、応募前に読める場所に置く。求人票の外側に置き場所を用意します。
この4つは、どれも新しく何かを作る作業ではありません。すでに社内で起きたことを言葉にして、読める場所へ移すだけです。1件目を書き出した時点で、次の募集要項に足すべき一文が見つかることもあります。逆に「うちにはこれといった特徴がない」と感じている会社ほど、辞めた人のずれを起点にすると書くことが出てきます。
置き場所については、求人媒体のページではなく自社サイト側を勧めています。媒体のページは掲載を止めれば消えますが、自社サイトに置いた記事は、応募を検討している人が会社名で検索したときにも残っているためです。この点は「魅力を伝える」がSEO対策になる理由で詳しく扱いました。
魅力採用「ミリョクル」について
ミリョクルは、経営者が月1回・60分話すだけで、その内容をAIが記事にして自社サイトに蓄積する魅力採用のサービスです。「魅力を作る・伝える・成長する」の3つの軸からなり、入社前に読まれる記事を、入社後の理念浸透にもそのまま使う設計にしています。料金は内容に応じて個別にお見積もりします。記事本数は収録内容により変動し、本数の保証はありません。
