1on1が報告会になるのは、部下が本音を話していないからです。本音が出る条件は2つあります。①上司が話しすぎず、部下の話を聞くこと。②そのうえで上司側もたまに自己開示することです。コミュニケーションは双方向なので、部下の内面だけを引き出そうとすると尋問に近づきます。上司が何を考えて仕事をしているのかを示す場を、1on1の外にも持っておくこと——魅力採用は、その「場」を仕組みとして作る考え方です。
なぜ1on1は「報告会」になってしまうのか?
フォーマットに沿って話すこと自体が目的になり、部下が本音を話さなくなるからです。そして部下が本音を話していない1on1は、時間を使っている割に得られるものがありません。
1on1は、社内のコミュニケーション不足に対する対策として有効な手段です。代表・原本も、施策としての1on1そのものは高く評価しています。問題は運用のほうにあります。定期的にやりましょうと決め、質問項目のシートを用意し、それに沿って進める。形は整いますが、埋めるべき欄が決まっていると、埋めることが目的になります。求人票が作業になるのと同じ構造です。
その結果として起きるのが、進捗確認と困りごとの有無を聞いて終わる会話です。上司の側は「話は聞いた」と認識し、部下の側は「特にありません」と答えて席を立つ。ここで交換されているのは情報であって、考えではありません。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「フォーマットに沿って話をして、何かただの報告会みたいな形になっちゃうケースってあるんじゃないかなと思うんですけども、そうやって報告会みたいになった時って、結局その社員は本音で話していないというケースになるんじゃないかな」
そもそもコミュニケーション不足の正体は何か?
「口に出して言わない限り、隣にいる人が何を考えているかは分からない」という、当たり前の事実です。特別な原因があるわけではなく、話す時間・話す場所・考えを伝える手段が用意されていないだけ、というケースが少なくありません。
この見方に立つと、コミュニケーション不足は人柄や相性の問題ではなく、条件の問題になります。相性が悪いから伝わらないのではなく、伝える機会が構造として存在しないから伝わらない。1on1が有効なのは、まさにこの欠けていた条件——時間と場所——を制度として与える施策だからです。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「人間って結局、隣にいる人が何を考えているかわからないんですよね。口に出して言わない限りは。それがやっぱりコミュニケーション不足の根本的な原因」
職場の人間関係は、実際に人が会社を離れる理由のひとつにも挙がっています。厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」によれば、転職入職者が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた割合は男性8.9%・女性11.5%でした。最も多い理由ではありませんが、労働条件や契約期間といった制度的な理由と並んで挙がり続けている項目です。
出典:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況・表5(2026年8月31日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf
※令和7年の女性は「その他の個人的理由」23.8%を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多く、人間関係11.5%は2番目です。男性は「その他の個人的理由」16.8%・「その他の理由(出向等を含む)」12.1%を除くと「定年・契約期間の満了」16.1%が最も多い項目です。
「部下が何を考えているか分からない」の裏側では何が起きているのか?
部下の側も「上司が何を考えているか分からない」と思っている、というのが代表・原本の見方です。コミュニケーションは双方向なので、片側だけが不透明ということは起こりにくいという考え方です。
ここが1on1の設計で見落とされやすい点です。1on1のシートは、たいてい部下の状況を聞く項目で構成されています。目標の進捗はどうか、困っていることはないか、キャリアをどう考えているか。つまり情報を引き出す方向が一方通行になっています。自分のことは何も明かさない相手から内面だけを尋ねられる時間は、部下から見れば面談ではなく確認作業です。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「上司が、社員が何を考えているかわからないって言っている時って、社員も上司が何を考えているかわからないって、やっぱり思っているんじゃないかな」
上司の考えが見えない状態が続くと何が起きるか。当社は、「うちの上司が何を考えているか分からない」という状態が離職につながりやすいと考えています。ただしこれは当社が実測したデータではなく、代表・原本の見解です。理念と定着率の関係は理念浸透と定着率の関係で詳しく扱っています。逆に、上司の思考が普段から見えていれば、面談の回数が少なくても相互理解はある程度保たれる——そういう設計ができると考えています。
1on1で本音を引き出すには、上司は何をすればいいのか?
条件は2つです。①上司が話しすぎない。②そのうえで、上司側もたまに自己開示する。順番も重要で、聞く姿勢が先、自己開示が後です。
| 1on1で起きがちなこと | 部下から見た状態 | 取るべき対応 |
|---|---|---|
| 上司がほとんど話している | 聞かされる時間になる | 話す量を意識的に減らす |
| シートの項目を順に確認する | 報告会・確認作業になる | 項目を埋めることを目的にしない |
| 上司は自分のことを話さない | 一方的に尋ねられている感覚 | 上司側もたまに自己開示する |
人は本来しゃべりたい生き物だと言われます。にもかかわらず1on1で口が重くなるのだとすれば、話しにくい条件が場のほうに残っていると考えるほうが自然です。上司が話す量を減らすだけでも、空いた時間は部下の言葉で埋まります。
ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟「ワンオンワンで上司がずっと話していたら、嫌ですよね、普通に考えたら。人ってやっぱり喋りたい生き物というふうには言われています。だからワンオンワンではやっぱり部下の話をしっかり聞いてあげる。そこに対して、たまに上司側も自己開示をしていく」
自己開示は、雑談で私生活を明かすことではありません。何を考えてその判断をしたのか、いま何に迷っているのか、仕事に対してどういう哲学を持っているのかを言葉にすることです。これは信頼を得るうえで必要な行為であり、部下が本音を出してよい場だと判断するための材料にもなります。
上司の自己開示は、1on1の場だけで足りるのか?
足りないと当社は考えています。1on1は多くの場合、月1回・数十分程度で運用される断続的な場であり、上司の考え方をまとまった形で伝えるには時間が足りないためです。
面談の中で自己開示を試みると、たいていは部下の話を聞く時間を削ることになります。かといって自己開示を省くと、上司は何を考えて仕事をしているのか、いつ発表するのか——という状態が続きます。ここが、1on1という制度だけでは埋めきれない部分です。
解決の方向は、1on1の外側に、上司の考え方が置いてある場所を用意しておくことだと考えています。あらかじめ読める状態になっていれば、面談の時間は部下の話に使えます。発信が意志ではなく設計の問題である理由は経営者の発信が続かない理由で整理しています。
幹部・先輩社員の考え方を発信することは、採用にどう効くのか?
入社前と入社後で、同じコンテンツが役割を持つからです。求職者にとっては「誰と働くことになるのか」を判断する材料になり、入社後の社員にとっては上司の考え方を知る材料になります。
ミリョクルは経営者が話した内容をAIが記事にして自社サイトに蓄積するサービスですが、話し手は社長に限りません。幹部社員・先輩社員の声を記事にしていく形にも応用できます。採用サイトの「先輩社員インタビュー」は以前からあるコンテンツですが、一度撮って終わりではなく、考え方を継続的に置いていく形にすると、社内向けの資産としても機能すると考えています。
なお、これによって定着率や応募数がどう変わるかについて、当社にはまだ実測データがありません。そういう設計にしているという構想としてお読みください。記事を蓄積する仕組み自体には、マーケティング用途での実測があります。
| サイト | 対象キーワード | 順位 | 運用期間 |
|---|---|---|---|
| kigyousien.com(自社) | 起業支援 伴走サポート | 1位 | 1ヶ月 |
| kigyousien.com(自社) | 起業支援 伴走 | 1〜3位 | 1ヶ月 |
| souryokomon.com(クライアント) | 僧侶顧問 | 1位 | 1ヶ月 |
| souryokomon.com(クライアント) | 仏教 組織開発 | 1〜3位 | 1ヶ月 |
いずれも2026年8月時点の順位であり、検索順位は変動します。ビッグワードを狙わず確実に取れるロングテールのキーワードから積み上げる設計にしているため、1ヶ月で結果が出ています。また、これは採用領域の実績ではなくマーケティング用途のSEO実績です。検証の詳細は自動化SEOで本当に上位表示できるのかにまとめています。誰の声を集めるかの考え方は先輩社員の声を拾うとEVP設計に近づくで扱っています。
出典:ノルツ株式会社 自社運用データ(kigyousien.com/souryokomon.com、2026年8月時点。souryokomon.com はクライアント掲載許可済み)明日の1on1から変えられることは何か?
制度を作り直す必要はありません。話す量の配分と、上司側の自己開示を1つ入れるだけで場の性質は変わります。
- 上司の発話時間を減らす。まず話す量の目安を決め、残りを部下の言葉に充てる。
- シートの項目を全部埋めない。埋めることを目的にすると報告会に戻ります。
- 上司が自分の考えを1つ話す。判断の理由、迷っていること、仕事の哲学のいずれか。
- 1on1の外に、考え方が読める場所を作る。面談の時間を部下の話に使えるようにするためです。
1〜3は今日から運用で変えられます。4だけは仕組みの話になりますが、上司の考えを社内に置くことと、会社の考えを社外に発信することは、同じ素材で同時に満たせます。理念が入社後の定着にどう関わるかは社員インタビュー記事を入社後の理念浸透に使うで扱っています。
魅力採用「ミリョクル」について
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