案が出ないのは、アイデア不足ではなく順番の問題です

新しい魅力の作り方は「マーケティング」と同じ|欲しい人材を明確にすることから始める

「新しい魅力を作ろう」と会議を開いたのに、出てくるのは他社でも見かける案ばかり。この状態は、アイデアの量ではなく考える順番から生まれていると考えています。解説は、2019年6月にノルツ株式会社を設立し、代表1人で会社を運営しながらHR・人材事業者コミュニティ「HR TOKYO」を運営する代表取締役・原本昌悟です。

要点

魅力をつくる工程のうち、新しい魅力の作り方は、代表・原本の考えではほとんどマーケティングと同じです。順番は3ステップ。①どんな人材が欲しいかを明確にする ②その人が何を求めているかを考える ③それを満たせるものを会社の魅力にする。案出しから始めると一般論になります。社員に聞くときも、要望を無秩序に集めず「会社はこうなりたい。そのためにどうしたらいいか」と目的を伝えてから問います。

なぜ「世の中にありふれた魅力」では差別化にならないのか?

他社にもあるものは、比較されたときに決め手にならないからです。並べた瞬間に同じ列に入ってしまいます。

採用で新しい魅力を打ち出そうとすると、まず思いつくのは研修制度・福利厚生・評価制度といった定番の項目です。これらは意味のない施策ではありません。ただし、世の中に溢れている魅力だと差別化にまではならない、というのが代表・原本の立場です。求職者から見て「この会社で働きたい」と思わせるには、その会社独自の魅力まで踏み込む必要がある、という考え方をしています。

「新しい魅力を作っていこうとした時に、やっぱり世の中に溢れているような魅力だと差別化にまではならないんですよね。その企業の魅力を高めて、この企業で働きたいと思わせるためには、やっぱりその会社独自の魅力っていうのをね、しっかり作っていった方がいいんじゃないかな」

ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟

とはいえ、定番の軸を無視してよいわけではありません。定番の軸は「やっても勝てないが、やらないと負ける理由になる」という位置づけです。この考え方は新しい魅力は「やれば勝てる」わけではないで扱っています。定番を潰したうえで、その先に独自の魅力を置く、という二段構えになります。

日本のオフィスの会議室で経営陣3名がテーブルを囲んで採用について議論している様子

新しい魅力の作り方は、なぜ「マーケティングと同じ」なのか?

誰に向けるかを先に決め、その人のニーズを満たすものを作る、という構造が同じだからです。商品開発と採用で、手順そのものが変わりません。

マーケティングでは、商品を作ってから買い手を探すのではなく、買い手を決めてから商品の中身を決めます。採用における「新しい魅力」も同じで、魅力の案を並べてから誰に刺さるかを考えるのは順番が逆だ、というのが代表・原本の見方です。この順番を守ると、考えることが一気に減ります。

「新しい魅力の作り方なんですけれども、これってほとんど私はマーケティングと一緒なんじゃないかなというふうに考えていたりします」

ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟
出典:ノルツ株式会社 代表取締役 原本昌悟へのインタビュー(2026年8月29日収録)。本記事の手法は名義人の見解であり、効果を保証するものではありません。

最初に決めるべき「どんな人材が欲しいか」は、どこまで具体的にするのか?

「うちの会社にはこういう人に入ってほしい」と、社内の全員が同じ像を思い浮かべられる程度までです。職種名と経験年数だけでは足りません。

求める人物像を「主体性のある人」「コミュニケーション能力の高い人」と書いている求人票は珍しくないと感じています。ただ、この粒度では次の工程に進めません。その人が何を求めているかを考えるのが次のステップである以上、人物像は「何を求めているかを想像できる解像度」まで下げておく必要があります。

たとえば「主体性のある人」ではなく「前職で指示待ちの環境に不満を持ち、自分で決めて動きたいと考えている人」まで具体化する(この例は当社が説明のために作ったものです)。ここまで来ると、その人が求めているものが自然と見えてきます。求める人物像の解像度が採用コンテンツ全体に効く理由は先輩社員の声を拾うとEVP設計に近づくでも扱っています。

欲しい人材が「求めているもの」は、どうやって知るのか?

すでに自社で働いている社員に聞くのが最短です。欲しい人材像に近い社員は、その会社を選んだ本人だからです。

代表・原本は、実際に自社で働いている社員の意見を聞くことを重視しています。ここで聞くのは「いまある魅力」だけではありません。いまどんな人に来てほしいか、この会社にどういう魅力があると嬉しいか。この2つを社員に投げかけることで、これから作る魅力の材料が集まります。

すでに社内にある魅力を洗い出す方法(1on1・社員インタビュー・アンケート・付箋ワーク)は自社の魅力の見つけ方にまとめています。このページで扱っているのは、その先の「まだ社内にないものを作る」工程です。

社員に意見を聞くとき、「意見箱」ではなぜうまくいかないのか?

目的を伝えずに要望だけを集めると、収拾がつかなくなるからです。集めた後に会社側が困ります。

従業員の要望を無秩序に回収する形式にすると、方向性の異なる要望が大量に集まります。設備に関する希望から評価制度の話まで並列で出てきたとき、どれを採用すべきかを判断する基準が社内にありません。結果として集めたけれど何も決まらないという状態になりやすい、というのが代表・原本の見立てです。

問題は社員の意識ではなく、聞き方の設計にあります。何のために聞いているのかが共有されていない状態で問えば、答える側は自分の要望を書くしかありません。

社員から使える答えを引き出すには、どう聞けばいいのか?

会社が目指す方向を先に伝え、そのうえで「そのためにどうしたらいいと思うか」と問うことです。問いの前に前提を置きます。

「ある程度目的を持たせて、うちの会社はこういうふうになりたいみたいなことを伝えた上で、そのためにどうしたらいいと思うか、みたいな、そういうところをちゃんと意図を伝えた上で質問をすれば、従業員の皆さんって結構真面目に答えてくれるんじゃないかな」

ノルツ株式会社 代表取締役 原本 昌悟

同じ相手に同じテーマを聞いても、前提の有無で返ってくる答えが変わります。要望を聞かれれば要望を答え、目的を共有されたうえで手段を聞かれれば手段を考える。社員が真面目に答えるかどうかは、意識の問題ではなく問いの設計の問題だと考えています。

聞き方社員への伝え方返ってくるもの使いやすさ
意見箱型「要望があれば書いてください」個別の要望が無秩序に集まる判断基準がなく収拾がつきにくい
目的提示型「会社はこうなりたい。そのためにどうしたらいいと思うか」目的に沿った手段の案そのまま魅力の候補として検討できる
出典:ノルツ株式会社 代表取締役 原本昌悟へのインタビュー(2026年8月29日収録)。表の分類は当社の整理であり、実測データに基づく比較ではありません。

なお、目的を伝える側が普段から何も発信していない場合、この問い方は機能しにくくなります。「会社はこうなりたい」が初耳では、社員は答えようがないためです。上司・経営者側からの日常的な発信については「報連相」は部下から上司だけじゃないで扱っています。

壁に貼られた無地の紙の前で腕を組んで考えている日本人男性の後ろ姿

一度決めた魅力は、そのまま固定していいのか?

固定しないほうがよいと考えています。魅力は、いまあるものを引っ張り出して終わりではなく、変化していくものだという前提に立ちます。

事業の内容が変われば、欲しい人材も変わります。欲しい人材が変われば、その人が求めるものも変わる。マーケティングの出発点である「誰に」が動く以上、魅力も動くという構造です。だからこそ、社員に聞く作業は一度きりのイベントではなく、継続的に回すものとして設計するほうが現実的だと考えています。

発信も同じで、一度で伝えきるより更新し続けるほうが伝わります。この点は会社の魅力は「一度で伝える」より「更新し続ける」ほうが信頼されるで整理しています。

マーケティング的に新しい魅力を設計する手順は?

欲しい人材から逆算する4ステップです。案出しは最後に来ます。

  1. どんな人材が欲しいかを決める。職種と経験だけでなく、その人が前職で何に不満を持っていそうかまで書き出します。
  2. その人が求めているものを言語化する。ここは想像で構いませんが、社内に近い属性の社員がいれば直接聞きます。
  3. 社員に目的を伝えたうえで問う。「会社はこうなりたい。そのためにどうしたらいいと思うか」「いまどんな人に来てほしいか」「どういう魅力があると嬉しいか」の3問が起点になります。
  4. 求めているものを満たせるものを魅力にする。ここで初めて施策の案を出します。ステップ1〜3を飛ばして出した案は、一般論になりやすい工程です。
出典:ノルツ株式会社 代表取締役 原本昌悟へのインタビュー(2026年8月29日収録)。インタビューで語られたのは「欲しい人材を決める→その人が求めるものを考える→それを満たすものを魅力にする」の3点と社員への問いかけで、4ステップへの整理と各ステップの補足は当社によるものです。

この4ステップで出てきた案を、そのまま制度として本格導入するのは早いと考えています。導入と撤回を繰り返すと「何がいいんだかわからない」という状態になりやすいため、コストや満足度の変化、期待できる求人・応募の見込みを先に確認する。この進め方は新しい魅力は「やって終わり」にしないで扱っています。

また、社内の検討だけでは案が枯れやすいという問題もあります。社外の経営者との情報交換をどう使うかは社内だけで考えると魅力は止まるにまとめています。

魅力採用「ミリョクル」について

ミリョクルは、経営者が月1回・60分話すだけで、その内容をAIが記事にして自社サイトに蓄積する魅力採用のサービスです。「魅力を作る・伝える・成長する」の3つの軸からなり、既存の魅力の言語化から、新しい魅力の設計、発信までを一貫して支援します。料金は内容に応じて個別にお見積もりします。記事本数は収録内容により変動し、本数の保証はありません。

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原本

原本 昌悟 ノルツ株式会社 代表取締役。2019年6月に同社を設立。デザイン経営による経営者伴走支援、起業支援、Web制作・SEOを手がける。HR・人材事業者コミュニティ「HR TOKYO」運営。

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